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国立大学独立行政法人化問題週報

Weekly Reports  No.102 2002.1.13 Ver 1.12

http://ac-net.org/wr/wr-102.html 総目次:http://ac-net.org/wr/all.html 講読(無料):http://www.mag2.com/m/0000031268.htm
Ver 1.12(2003-01-18):朝日新聞連載[102-ikn-1-1]のリンク追加 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 年頭にあたって 国立大学の独立行政法人化が国会で審議される年が始まりました。2月下旬に は法案が公開されると伝え聞きますので、法案大綱はすでに確定しているはず です。それが未公開のままであることは、内容が長期間国民の目に曝されれば 「国立大学法人化」のばけの皮がはがれ国会審議が混乱し政府の「予定」が狂 うことを恐れているのでしょうか。この期の及んでも秘密主義を続けているこ と自身が、「嘘で固めた」国立大学法人化政策を進める存在が感じている心細 さを証しているように感じます。 構造改革の痛みを担う「弱者」とは「個人という存在」であり、構造改革で強 くなりうるのは「組織」だけです。大学構造改革も同じです。「強くなる」か もしれないのは「組織」であり、教育・研究の仕事場であった大学は、構成員 に組織への忠誠を要求し、それに服しない構成員を圧迫する「組織」に変貌し ますーーそうしなければ違法とされる組織になるのですから。そして、その組 織は中央官庁に忠誠を誓わなければ存続できなくなるのです。個人が組織に従 属する度合がもともと強い日本社会で、このような制度変更をすることの結末 は、想像するだにおぞましいものがあります。 政治的にはマイナーに見えた問題が国の行く末を左右することは良くあること です。どうか、大学関係者の方は、法人化への賛否にかかわりなく、これから の数ヶ月、事の推移を注意深く見守り、当事者としての責任を全うされること をお願いします。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 目 次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [102-0] 内容紹介  [102-0-1] 朝日の連載記事  [102-0-2] 日本学術会議に関するパブリックコメントへの内閣府l「回答」  [102-0-3] 一日中教審についての青木氏から文部科学省への公開質問状  [102-0-4] 九州大学の任期性導入問題  [102-0-5] 読売報道「レベル低い国立研究所は廃止」について  [102-0-6] 国立大学におけるの過度の教員流動性による弊害  [102-0-7] インターネットのメディアの萌芽期 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [102-dgh] 独立行政法人問題  [102-dgh-1] 「2/01 国立大学の独法化・再編統合に反対する交流・・・  [102-dgh-2] 「1/16 国立大学法人化・教員養成系学部の統廃合問・・・ -------------------- [102-uni] 大学の動き  [102-uni-1] (毎日03-01-01)九州大:助手以上の全教員対象に任期制・・   [102-uni-1-1] 全大教「任期制の導入問題に関する緊急要望書」・・・   [102-uni-1-2]「京都芸大に法制化任期制は要らない」 [102-uni-2] 東北大が募集人員削減 少人数教育の徹底 -------------------- [102-ikn] 意見  [102-ikn-1] 編集発行人から朝日新聞社会部への手紙(2003-01-06)   [102-ikn-1-1] 「転機の教育 大学の力」朝日連載 2003-01-01〜01-10 (1) 知の戦場 人材集め国境なき競争 (2) 全入時代へ 学生に異変 教え方模索 (3) 産学連携 急接近 危機感がバネ (4) 第三者評価 緊張感が生む質の向上 (5) 教養復権 音楽と文学 融合授業も (6) 実学の進化 プロ養成 時代が後押し (7) 地域と共に 生き残りへ社会貢献 (8) 進む国際化 開放へ押し寄せる波(おわり)  [102-ikn-2] 渡辺勇一氏(新潟大学教授)の独立行政法人問題関係文書   [102-ikn-2-1] 1999-10-25: 独立行政法人は決して容認できる制度・・・   [102-ikn-2-2] 2001-04-01: 学生による授業評価をどう見るか   [102-ikn-2-3] 2001-06-24: 日本の科学研究のあり方   [102-ikn-2-4] 2001-10-29: 独法化についての文科省への意見・・・   [102-ikn-2-5] 2003-01-06: 学生による授業評価の平均値は後期に高く   [102-ikn-2-6] 「学生にとっての大学改革」  [102-ikn-3] 鹿児島経済大学三教授からの新年のメッセージ(2003-01-04) [102-ikn-4] 佐藤真彦(横浜市立大学)「徹底論証:学問の自由と大学の自治 -------------------- [102-acd] 研究問題  [102-acd-1] 内閣府:日本学術会議に対する意見募集の結果について  [102-acd-2] (読売03-01-08)レベル低い国立研究所は廃止、文科省が3月に選別   [102-acd-2-1] 国立大学協会事務局から読売新聞社への抗議文書 1999-12-10:  [102-acd-3] (朝日03-01-09) 核融合研究、拠点集約へ 京大・九大施設は廃止 [102-acd-4] (毎日03-01-10) 科研費の繰り越し容認へ 補助金流用受け財務省 -------------------- [102-doc] 文献紹介  [102-doc-1] 渡邊洋三「日本社会はどこへ行くー批判的考察ー」1990.5.21  [102-doc-2] 渡邊洋三他「日本社会と法」1994.5.20 -------------------- [102-mda] メディア問題  [102-mda-1] メディアの辺境地帯サイト   [102-mda-1-1]「新年のご挨拶2003-01-01」   [102-mda-1-2]マスコミの自浄能力喪失小史 1995-2002  [102-mad-2] My News Japan -------------------- [102-kd] (転載)国公立大学通信 [kd 03-01-05]  [102-kd-1] 「大学教員の流動化と地方大学の振興計画および大学制度全般  [102-kd-2] 「組織への精神的隷属を強化する懸念」  [102-kd-3] ネット上公開されている意見等の紹介  [102-kd-4] 「11・30一日中教審」の運営方法に関する公開質問状 [102-kd-4-1] 参考:大岡みなみ氏傍聴メモ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [102-0] 内容紹介 -------------------- [102-0-1] 朝日の連載記事 朝日が新年に「大学の力 転機の教育」を連載した[102-ikn-1-1]。内容は、政 府や産業界が飴と鞭で大学に強要しようとしている変革を、時代の要請である かのように客観性を装って描くことと、欧米やアジアの諸国に遅れを取るとる なという論調に終始しており、国民の判断を誤らせる危険を感じた。戦前、政 府と財界を代弁し戦争を煽った新聞社があったが、時代に迎合せず時代を超え た普遍的視座や価値を国民に提示する使命において、少数の記者の個人的努力 は輝いているが、組織としての日本のマスメディアは、何か変ったのだろうか。 -------------------- [102-0-2] 日本学術会議に関するパブリックコメントへの内閣府「回答」 112人の意見の概要と内閣府の「回答」の表[102-acd-1]がインターネットで公 開されている。勧告権を残すべきであるという編集者の意見に対する回答は 「法的権限に頼るのではなく、内容の科学的水準や中立性によりその権威を高 め、政府や社会に尊重されるようにするべき」というもの。選挙結果にあぐら をかいて、政策の水準や中立性による「権威」もなしに「法的権限」を振りか ざしているのは誰か?法律を思い通りに作りかえ法的権限をほしいがままにし ているセクタが、日本国憲法で保障されてはいるが司法が真剣に守ろうとしな い諸権利以外に何も法的権限のないセクタに対し「法的権限に頼るな」と言え るのだろうか? また、前会員が後任後継者を推薦できる「co-optation」制導入を批判する 意見もいくつか掲載されているが、紋切型の回答を繰り返えしているだけであ る。独立行政法人化のような大きな問題について意見募集しながら、意見に対 しに回答どころか整理すらしなかった省に比べれば、多少はましではあるが、 このような形式的コメントで終わりにするのであれば、国民の意見を聞いた、 というより愚弄した、という方が適切であろう。 -------------------- [102-0-3] 一日中教審についての青木氏から文部科学省への公開質問状 教育基本法の「見直し」について、東京で昨年11月30日に開かれた「一日中教 審」で意見発表した中で、だた一人、見直しに明確に反対の意見を述べた青木 氏が、発表申込の意見分布を調査した結果、採択された意見の分布に情報操作 の疑いを持ち、12月6日に文部科学省に公開質問状を出している[102-kd-4] が、 同氏のサイトによれば、昨年の12月23日でも回答がないという。このような重 要な事件についても、マスメディアは完全に沈黙している。これほどマスメディ アの情報操作を明証するものはないだろう。また、入場者の持ち物の検査まで するほどの異常に厳重な警備は、ある種の人々が、基本法の「改正」をどれほ ど重要なものと考えているかを証明している。 -------------------- [102-0-4] 九州大学の任期性導入問題 「大学の教員等の任期に関する法」(*1)第四条に明白に違反する「改革案」に ついて、文科省高等教育企画課は「任期制は異動を活性化し、教員の新たな出 会いを通して新しいアイデアを生み出す目的で導入した。総合大学で全教官を 対象にするのは初めてだと思う。」と話しているという[102-uni-1]。法治国 家の教育行政が言うべきことだろうか。 (*1) http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/09/06/970602.htm -------------------- [102-0-5] 読売報道「レベル低い国立研究所は廃止」について 研究所の「レベル」を判断する際に、任期制を導入しているか否かも重要な点 としてカウントするという[102-acd-2]。一体どういう「評価」なのだろうか。 各研究所には mission がある。そのmission の固有性がまず問題であろう。 いくらなんでも、この記事にあるような馬鹿げたことを文部科学省が言うだろ うか。読売が得意とする政策誘導記事[102-acd-2-1]の一例ではないか? -------------------- [102-0-6] 国立大学におけるの過度の教員流動性による弊害 大都会にはない国立大学では、教員の流動性が高すぎで支障があることを島根 大学の廣嶋教授が、教育基本法見直しへのパブリックコメント[102-kd-1]の中 で指摘している。文部科学省は、教員の流動性の実態を当然把握していると思 うが、統計を公表したことはないし、マスメディアも調べようともしない。 -------------------- [102-0-7] インターネットのメディアの萌芽期 マスメディアの一面的な報道や情報操作を批判するジャーナリストや個人が、 インターネット上で種々の試みをしている。すでに数多くのものがあるが、 「まだ旧体制下の新聞社と月極契約をしている人達へ」[102-mda-2-1]という サイトを運営している元日経記者が、My News Japan というサイトを開設した [102-mda-2]。ジャーナリストの精神を失わないプロの努力が新しメディアに 成長していくことを祈りたい。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [102-dgh] 独立行政法人問題 -------------------- [102-dgh-1] 「2/01 国立大学の独法化・再編統合に反対する交流討論・決起集会」 独行法反対首都圏ネット事務局 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe4926.html -------------------- [102-dgh-2] 「1/16 国立大学法人化・教員養成系学部の統廃合問題懇談会のご案内」 日本共産党国会議員団 2002-12-13 http://www.jcp.or.jp/tokusyu/daigaku/20021228kondan.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [102-uni] 大学の動き -------------------- [102-uni-1] (毎日03-01-01)九州大:助手以上の全教員対象に任期制導入を 検討 総合大で初 http://www12.mainichi.co.jp/news/search-news/868287/8be38fB91e58aw814094C8afa90a7-0-1.html #(「大学の教員等の任期に関する法」第四条に明白に違反する「改革案」に ついて、文科省高等教育企画課は「任期制は異動を活性化し、教員の新たな出 会いを通して新しいアイデアを生み出す目的で導入した。総合大学で全教官を 対象にするのは初めてだと思う。」と話しているという。法治国家の教育行政 が言うべきことだろうか。) -------------------- [102-uni-1-1] 全大教「任期制の導入問題に関する緊急要望書」02-12-24 http://zendaikyo.or.jp/daigaku/02-12-24%20ninkisei.htm 「「大学の教員等の任期に関する法律」及びその制定の際の附帯決議等に反す る無限定な任期制の導入が行われることのないよう、「任期」法の趣旨の周知 等の適切な措置をとること。  また、中期目標、中期計画に任期制導入を促すかのような誤解を与える項目 を盛り込まないこと。任期制の導入の有無を評価の基準としないこと。」 -------------------- [102-uni-1-2]「京都芸大に法制化任期制は要らない」 http://web.kyoto-inet.or.jp/people/fuji3776/ninki/ -------------------- [102-uni-2] 東北大が募集人員削減 少人数教育の徹底 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe4940.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [102-ikn] 意見 -------------------- [102-ikn-1] 編集発行人から朝日新聞社会部への手紙(2003-01-06) http://ac-net.org/dgh/03/106-tjst-to-asahi.html (to:syakai4@ed.asahi.com) 「朝日新聞「大学の力ー転機の教育」[102-ikn-1-1]取材班 殿 謹賀新年 署名入で11名の記者の方が担当されることに意気込みを感じました。そこで、 お願いしたいことがあります。 私は一国立大学教官として、3年ほど前から、国立大学の独立行政法人化につ いて関心を持ち、その経過を追ってきましたが、貴社を含め、マスメディアの 報道が政府の主張と見解をほぼ忠実に繰り返えすことに終始してきたことに、 強い懸念を感じています。 この3年間、大学セクタでは、独立行政法人化を批判する動きが数えきれない ほどありました。しかし、マスメディアは「大学では根強い反対がある」と一 言を繰りかえすだけで、反対運動の全貌を具体的に報道したことがなかったこ とには意図的なものすら感じます。反対運動の報道は「文部科学省記者クラブ」 に属するメディアには好ましくないことは自明なだけに、記者の方が無意識に フィルタをかけてしまってきたのではないかと、気になるのです。 実際、この3年間、大学社会と学術団体からは数多くの声明・批判意見(*1)が ありました。種々の運動も続いています:旧文部省の独立行政法人化調査検討 会議に参加協力することを決めた2000年6月の国立大学協会総会の合意事項の 撤回を求め、67国立大学の804名が署名(*2)しました(2001.1)。2001年5 月に、大学外の著名人や国会議員、学生、も加った「独立行政法人化阻止、全 国ネットワーク」が結成(*3)され、様々な活動を開始しました。2001年9月の 中間報告には、120 余りのパブリックコメント(2001.10)が提出された(*4)に もかかわらず、整理もせず到着順に印刷して委員に配布されただけでした。 2002年3月に、ネットの呼び掛けに応じて、最終報告の内容に抗議し、市民170 名が文部科学省を囲む「人の鎖」をなしました(*5)。「独立行政法人化阻止、 全国ネットワーク」は昨年10 月にユネスコにアピール(*6)を送りましたが、 それに関して、世界科学者連盟会長は、日本の国立大学の独立行政法人化が、 世界全体で進行している、一部勢力による知的資源の独占の動きと明らかにリ ンクしている、として、各国の科学者会議に日本の科学者による独立行政法人 化反対の運動を支持するように求めるアピール(*7)を出しています。 (*1) http://ac-net.org/dgh/02/419-appeal.html (*2) http://ac-net.org/dgh/kdk-shomei/01206-houkoku.html (*3) http://www003.upp.so-net.ne.jp/znet/znet.html (*4) http://ac-net.org/dgh/01/a29-pcomments-list.html (*5) http://www003.upp.so-net.ne.jp/znet/znet/humanchain.html (*6) http://www003.upp.so-net.ne.jp/znet/znet/appealtounesco.html (*7) http://www.geocities.jp/chikushijiro2002/kokusai/jagreJ.html こういった種々の活動を「根強い反対意見がある」という抽象的な一言で済ま せるのは、報道の中立性に反するように感じます。それが少数意見であったと しても、報道しないのはジャーナリズムの使命の放棄と思いますが、実際には、 独立行政法人化で大学の本来の機能が深くダメージを受けると考えていない大 学人は居ないのですから、なおさらのことです。日本人の長けた「被統治能力」 のゆえに、黙々と独立行政法人化に耐えようとして「法人化対策」に奔走して いるに過ぎません。 設置基準の大綱化以来10年余も間断なく続いてきた無意味な制度改革で振 りまわされ、大学社会は疲れています。大学自身に責任があることだけに、士 気の低下はかなりのものです。そこに、大学を良くするはずもない、国立大学 の独立行政法人化(国立大学法人化)が実施されれば、新潟大学の渡邊勇一氏 が言うように「大学は悲鳴を上げずに、弱ってゆく。知を支えてきた意欲は墓 場へ向うであろう」(*8)。 (*8) http://www.geocities.co.jp/CollegeLife/7631/doku.htm 世界はthink globally, act locally をモットーとして動こうと努力している ときに、日本社会は、think locally, act globally という愚行かつ、世界に とって迷惑な動きを開始しようとしています。国立大学の独立行政法人化も国 益を最優先するだけの、まさに、think locally, act globally そのものの大 学改革であることにご注意ください。 ぜひ、この企画では、独立行政法人化や遠山プランが大学を破壊するだけでな く、世界の流れにも反するものである、という見方も十分取りあげることで、 国民が、行政の見解を批判的に検討できる機会を用意して欲しいと思いま す。・・・」 -------------------- [102-ikn-1-1] 「転機の教育 大学の力」朝日連載 2003-01-01〜01-10 (==> 意見[102-0-1]) (1) 知の戦場 人材集め国境なき競争 http://www.asahi.com/edu/lifelong/K2003010800612.html (2) 全入時代へ 学生に異変 教え方模索 http://www.asahi.com/edu/lifelong/K2003010900498.html (3) 産学連携 急接近 危機感がバネ http://www.asahi.com/edu/lifelong/K2003011000423.html (4) 第三者評価 緊張感が生む質の向上 http://www.asahi.com/edu/lifelong/K2003011300235.html (5) 教養復権 音楽と文学 融合授業も http://www.asahi.com/edu/lifelong/K2003011401176.html (6) 実学の進化 プロ養成 時代が後押し http://www.asahi.com/edu/lifelong/K2003011600333.html (7) 地域と共に 生き残りへ社会貢献 http://www.asahi.com/edu/lifelong/K2003011600338.html (8) 進む国際化 開放へ押し寄せる波(おわり) http://www.asahi.com/edu/lifelong/K2003011701345.html -------------------- [102-ikn-2] 渡辺勇一氏(新潟大学教授)の独立行政法人問題関係文書 http://ac-net.org/home/watanabe-y/ -------------------- [102-ikn-2-1] 1999-10-25: 独立行政法人は決して容認できる制度ではない http://ac-net.org/home/watanabe-y/91025-manus.htm -------------------- [102-ikn-2-2] 2001-04-01: 学生による授業評価をどう見るか (生物科学52巻4号 2001.4) http://ac-net.org/home/watanabe-y/01401-hyouka.shtml -------------------- [102-ikn-2-3] 2001-06-24: 日本の科学研究のあり方 http://ac-net.org/home/watanabe-y/01624-wtnb.shtml (国立大学独立行政法人化問題週報58号 コラム) http://ac-net.org/wr/wr-58.html 「・・・安斎育郎氏は、その著「理科離れの真相」(朝日新聞社)の中で、バ ブル時の、政府高官の「日本の科学技術はもう十分だ」という発言を示し、こ の時代に理科履修のための授業時間が激減した事実をあげている。  バブルが崩壊した後、今も低迷を続けている現在の日本において、財界と為 政者が科学を推進するシステムに極めて強い支配力を発揮し続けているのは、 上記の事情の裏返しである。今回発表された「大学の構造改革の方針」には、 尾身氏が表した「科学技術立国論」の目指した方向が、より粗野に凶暴な形で 表出している。・・・」 -------------------- [102-ikn-2-4] 2001-10-29: 独立行政法人化についての文科省への意見 http://ac-net.org/home/watanabe-y/11029-pubcom.htm -------------------- [102-ikn-2-5] 2003-01-06: 学生による授業評価の平均値は後期に高く http://ac-net.org/home/watanabe-y/03106-hyouka2.html なる -------------------- [102-ikn-2-6] 「学生にとっての大学改革」 http://www.geocities.co.jp/CollegeLife/7631/gakudai.html -------------------- [102-ikn-3] 鹿児島経済大学三教授からの新年のメッセージ(2003-01-04) 鹿児島経済大学三教授を支援する全国連絡会サイト http://www.jca.apc.org/~k-naka/futoukaiko/meseage3.htm#030101 -------------------- [102-ikn-4] 佐藤真彦(横浜市立大学)「徹底論証:学問の自由と大学の自治 の敵,橋爪大三郎「あり方懇」座長の危険性と国公立大学独立行政法人化の行 き着く先」2003年1月10日 http://www2.big.or.jp/~yabuki/doc03/sato0301.htm ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [102-acd] 研究問題 -------------------- [102-acd-1] 内閣府 政策統括官:日本学術会議に対する意見募集の結果について (2002-12-16) http://www8.cao.go.jp/cstp/pubcomme/gakujutsu/kekka.pdf #(112人の意見の概要と内閣府の意見の表。管理者の意見については、以下 のように要約され、統括官の意見が述べられている。選挙対策で得た選挙結果 にあぐらをかいて、政策の水準や中立性による権威もなしに法的権限を振りか ざすのは誰か?法律を思い通りに作りかえ法的権限をほしいがままにしている セクタが、日本国憲法で保障されてはいるが司法が真剣に守ろうとしない諸権 利以外に何も法的権限のないセクタに対し「法的権限に頼るな」と言うのか?) (意見No18 の概要) 科学技術政策を、政治的に独立した立場から監視し勧告で きる権限を持つことが不可欠である。従って「勧告権」は今後も必要である。 http://ac-net.org/dgh/02/c03-to-cstp.html (意見No18 に対する統括官の考え方) 「科学技術政策に関する提言は日本学術 会議の基本的機能の一つとして重要ですが、これを有効なものとするためには、 法的権限に頼るのではなく、内容の科学的水準や中立性によりその権威を高め、 政府や社会に尊重されるようにするべきであると考えます。」 -------------------- [102-acd-2] (読売2003-01-08)レベル低い国立研究所は廃止、文科省が3月に選別 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe4933.html #(研究所の「レベル」を任期制を導入しているか否かで判断するとは、一体 どういう「評価」なのだろうか。各研究所にはmission がある。そのmission の固有性がまず問題であろう。いくらなんでも、この記事にあるような馬鹿げ たことを文部科学省が言うだろうか。読売が得意とする政策誘導記事の一例で はないか?) -------------------- [102-acd-2-1] 国立大学協会事務局から読売新聞社への抗議文書 1999-12-10: http://ac-net.org/dgh/99c13-yomiuri.html -------------------- [102-acd-3] (朝日03-01-09)核融合研究、拠点集約へ 京大・九大施設は廃止 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe4934.html 参考:第12回総合科学技術会議議事録2001.11.28より http://www8.cao.go.jp/cstp/siryo/haihu13/siryo7.pdf (白川英樹総合科学技術会議議員発言録収録 http://ac-net.org/dgh/doc/shirakawa.html) 【白川議員】ITER計画に参加、誘致することについて、最終判断をするた めに、もう少し考慮しなければならない点を2つ述べたいと思います。  1つは、資料5−1「ITER計画に対する考え方」の4ページ目の最後の イの部分に書いてあることですが、国内核融合研究について考慮するというこ とです。それは資料5−2の2ページ、今、桑原議員から説明がありました核 融合研究における各種方式の比較です。日本は科学技術に関して非常に競争的 環境に乏しいと言われていながら、日本ではこの方式全部を競争してやってい る、非常に競争力のあるところです。そういうところで、トカマクが一番進ん でいるからということで、ITER計画に取り上げられたわけですけれども、 それに本当に集中していいものかどうかという点には懸念があります。すべて を競争するというわけには、資金の関係でいかないかもしれませんけれども、 その点を十分に考慮してほしいというのが1点。 それから、2点目は、先ほど井村議員からお話がありましたイギリスでの早期 実現計画の提案ですけれども、具体的にはどこが可能だからということは余り 示されていない。資料5−1にも書かれてありますように、この研究というの は50年、100年を見なければ電力として実現できないということでありま すから、じっくり考えなければいけない。その間にエネルギーをどうするかと いうことが非常に問題なわけです。 端的に言いますと、ITER計画というのは、太陽の中で起こっている核融合 を地上に持ってくるということですけれども、その間に最大限に活用すべき、 科学技術上、資金を投入して研究すべきことの最も大切なところは、現に太陽 から降りそそいでいるエネルギーで、それをもっともっと有効に活用するため の資源を投入すべきであるという、2つの前提に立って判断をしていただきた いものだと考えております。 -------------------- [102-acd-4] 科研費の繰り越し容認へ 補助金流用受け財務省 (毎日03-01-10) http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe4942.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [102-doc] 文献紹介 -------------------- [102-doc-1] 渡邊洋三「日本社会はどこへ行くー批判的考察ー」1990.5.21 岩波新書120 ISBN 4-00-430120-3 http://www.ne.jp/asahi/monkey/academy/book/watanabe003.htm http://www.jbook.co.jp/product.asp?PRODUCT=278819 #(13年を経た今、市民的自由を徹底して抑圧する方向に時代は動きつつある。) p234「自民党は日本が自由社会であることを強調するが、それは企業にとって の自由でしかなく、市民にとっての自由ではない。西側の国で、日本くらい市 民にとって自由のない国はない。市民的自由を抑圧する法システムとそれを支 える国民意識を改革することが望まれる。」 p234 日本を「自由社会」にするために。 この新しい法システムの基軸は何か。それは日本国憲法の「個人の尊厳」を中 心にすえることである。集団主義にかくれていままで見えなかった「個」を取 り出し、それを基盤にすえて、個人の主体性、自由、人権、自己決定権、幸福 追求権を花開かせるような法システムをつくつことが、改革の目標ではなかろ うか。もし自由社会というならば、とりあえず最低、これだけの改革は不可欠 であるという若干の指摘して結びとしたい。 (1)言論の自由、体制批判の自由を保障すること。・・・ (2) 秘密主義をやめて、市民の自由な意見をオープンに反映する手続き、制度 をつくること。・・・ (3)政治が教育に介入することをやめること。・・・教師みずからの信念にも とづいて主体的な教育ができなければ、それはもはや教育とはいえない。そし て、教育の自由のない国は自由主義の国家に値しない。・・・ (4)政治的自由を保障すること。・・・数百万人に及ぶ国家公務員や地方公務 員は、政治的自由をいちじるしく制約されている。・・・ (5)司法の独立と裁判官の市民的自由を保障すること。・・・検察官はもとよ り裁判官にも市民的自由がない・・・」 --------------------  [102-doc-2] 渡邊洋三他「日本社会と法」1994.5.20 岩波新書335 ISBN 4-00-430335--4 「p189 公共性とは ここでいう民主主義の視点とは、一言でいえば、国民あるいは社会的弱者であ る民衆の立場から公共性の中身を問い直すということである。より具体的には 次の3つの原則が大切である。 第一に、行政と市民との間に対立がある場合には、強力な権力を背景にして 活動する行政と、財力、知識および時間的余裕などすべてにおいて行政にはまっ たく敵わない市民との間に、できるかぎり対等・公正という原則が貫かれるよ うにすることである。第二に、市民相互間、とくに巨大な力をもつ大企業と、 力をもたない一般市民との間に対立がある場合には、両者の対等性を積極的に 実現することである。そして、第三に、これらを実現するために、行政情報と 企業情報を市民に公開させ、またそれを前提にし、それと結びつけて、市民が 行政施策の形成・決定過程や執行過程に積極的に参加することである。 p190 二つの公共性 さて、このような原則を前提として、民主主義憲法の価値序列の要請にした がった公共性のあり方について考えてみると、何よりも、市民の生存権を保障 することこそが、実質的意義における公共性の中身であると見ることができよ う。これをここでは「市民的・生存権的公共性」と呼ぶことにする。 ところが、資本主義国家の現代行政の実態は、市民の利益ではなく、国家の 利益(国益)を担うものとして現われる。そこでは、形式的に「公共」という衣 をまといながら、実質的内容は大企業の担い手やそれと結びついて特権的階層 など一部の人たちを守るものとなっている。今日、日本の政治でもっとも問わ れている、政財官界の癒着構造といわれるものは、官=行政が、政と財との橋 渡しをし、「公共」=「国益」の名において、一部の私的利益の追求を助ける メカニズムであることは明らかであろう。このような、公共性自体が歪曲され ている現実の行政は、「国家的・特権的公共性」と呼ばれるのにふさわしい。」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [102-mda] メディア問題 -------------------- [102-mda-1] メディアの辺境地帯サイト http://www.aurora.dti.ne.jp/~osumi/ -------------------- [102-mda-1-1]「新年のご挨拶2003-01-01」 http://www.aurora.dti.ne.jp/~osumi/d-latest.html -------------------- [102-mda-1-2]マスコミの自浄能力喪失小史 1995-2002 http://www.aurora.dti.ne.jp/~osumi/hrmedia/hrmed03a.html -------------------- [102-mda-2] My News Japan http://www.mynewsjapan.com/ -------------------- [102-mda-2-1] 「まだ旧体制下の新聞社と月極契約をしている人達へ」 http://www5a.biglobe.ne.jp/~NKSUCKS/index.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [102-kd] (転載)国公立大学通信[kd 03-01-05] 中央教育審議会中間報告「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本 計画について」(cf:[kd 02-12-14])に対するパブリックコメントを紹介します。 また、ネット上にある数多くの意見表明や資料提供の一部を紹介します [102-kd-3]。 最近の国大協総会と同様に、会場内外の厳重な警備体制の下で、11月30日 に東京で開催された「一日中央教育審議会」の発表者である青木茂雄氏から文 部科学省への公開質問状[102-kd-4]と、ジャーナリストの大岡みなみ氏の傍聴 記録[102-kd-4-1]も紹介します。 青木氏の公開質問状にある 「教育基本法の「改定」問題を国民に問うのがこの会の趣旨である。したがっ て、賛成・反対同数の意見発表者を選ぶべきである。同数でなければ、賛成・ 反対の数に比例して意見発表者を選ぶのが筋である。私が確かめた範囲でも、 反対の意見は30通を越えている。実際はもっと多くが反対意見であったは ずである。しかし、意見発表者のなかで明確に反対意見を述べたのは私ひと りである。おかしいではないか。どうしてそうなったのか、その理由を説明 していただきたい。」 「12月2日(月)に私が電話で生涯学習政策局政策課に聞いたところ、賛 成・反対の数に比例するのではなく、意見の内容に応じてとのことであった が、そうであるとするならば、同趣旨の意見(「愛国心」を条文に盛り込め というもの)が3人もあったが、おかしいではないか。これはどうしてか? 理由をご説明願いたい。」 などの質問は、情報操作の有無を問うものであり、日本社会全体が回答を知る 必要があります。文部科学省は無回答や曖昧回答では済ませられないものと思 います。発行人が知る限り、この公開質問状をマスメディアが報じていないよ うですが、もしもそうだとすると、不偏な広報という初歩的使命すらジャーナ リズムは怠っていることにならないでしょうか。 --[ kd 03-01-05 目次]---------------------------------------------- [102-kd-1] パブリックコメント:廣嶋清志「大学教員の流動化と地方大学の 振興計画および大学制度全般の評価制度の導入・整備について」 [102-kd-2] パブリックコメント:編集発行人「組織への精神的隷属を強化す る懸念」 [102-kd-3] ネット上公開されている意見等の紹介 [102-kd-4](転載)青木茂雄「11・30一日中教審」の運営方法に関する公開質問状 ------------------------------------------------------------------- --[begin kd 03-01-05-1]-------------------------------------------- [102-kd-1] 廣嶋清志(島根大学法文学部)「大学教員の流動化と地方大学の振興計画 および大学制度全般の評価制度の導入・整備について」 ------------------------------------------------------------------- 文部科学省生涯学習政策局政策課 政策審議第一係御中 「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について (中間報告)」に対する意見 「大学教員の流動化と地方大学の振興計画および大学制度全般の評価制度の導 入・整備について」 島根大学法文学部  廣嶋清志 まず,以下の点について述べます。 第3章 教育振興基本計画の在り方について (2)「知」の世紀をリードする大学改革の推進 (i)「知の拠点」を支える教育研究環境の整備 ○教員・学生の流動化の促進(のうちの教員の流動化について)  一般的に適度の流動化については賛成です。しかし現在,私の所属する学科 ではむしろ全体的に流動傾向が高く,学科,学部の運営の中心となるべき経験 ある教官が少なすぎるという問題が存在しています。地方大学の研究教育上の 諸条件の不利に加え,教官の家庭生活上の不利な条件(たとえば子弟の教育環 境)もあるため大都市の国立,私立大学に人材が常に流出するという傾向が続 いています。教員の固定化というのは大都市の一部の国立大学に限られた状態 ではないでしょうか。むしろ地方大学の教員の流動性の低下,定着化に知恵を 絞ってもらいたい。このことは地方に大学が存在することの意義をどのように 考えるかということに関連します。 (ii)教育研究機能の充実 のところで,「我が国の大学が世界に伍(ご)し ていけるだけの競争力を持つ健全な「知の拠点」となるための機能を継続的に 果たしていくために」と書かれている趣旨は結構ですが,その結果,群馬大学 と埼玉大学の合併に見られるように,たとえば島根大学も島根県にある必要が ないなら,大阪か神戸に出て行った方が競争力を持つ点でははるかに有利で効 率的ということになります。今回の計画はこういう傾向を助長することを当然 と考えているのでしょうか。高等教育機関は地域社会の発展性に重要な影響力 をもっています。教育計画は地方の地域社会の発展を支え,促す側面を持つよ う十分考慮しなければならないと思います。  これと重要な関連をもつのが,(iii)評価制度の導入・整備です。個々 の大学における評価というのは,現状での制度と予算を前提としての評価が中 心となると思われ,個々の大学に関連する制度的な枠組み自体の評価というの はほとんど行われないか,行われにくいものと考えられます。したがって,大 学制度全体を適正に評価する評価制度を独自に導入・整備しない限り,現状で は日本の大学の発展にとって重要な障害となっているものと思われます。とく に,現在までのところ文部科学省の科学研究助成金は大学間の配分において極 めて偏っている,つまり地方大学に著しく不利になっていると見られます。こ のような文部科学省の科学研究助成金の配分状況についても評価制度を導入・ 整備し,適正な評価を行うべきであると思われます。 以上。 --[end kd 03-01-05-1]---------------------------------------------- --[begin kd 03-01-05-2]---------------------------------------------- [102-kd-2] 編集発行人「組織への精神的隷属を強化する懸念」 http://ac-net.org/dgh/02/c15-kihonhou-tjst.html ---------------------------------------------------------------------- 文部科学省 中央教育審議会 「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興 基本計画の在り方について(中間報告)」に対する意見募集に提出した意見 中間報告は現代日本の多様な問題に言及しているが、組織と個人の関係の歪み を看過している点に問題がある。企業や公共機関等の諸組織において、構成員 が組織への過度な忠誠を陰に陽に強いられながら、集団の論理への構成員自身 の従順性が、それを支えるーー日本社会のこの特性は、組織の論理と価値観が 日本社会を支配することを許す。組織は人間に無関心であり、その行動原理は 没理的で非倫理的で無慈悲なものになりがちであり、組織の価値観の支配は日 本社会の諸病理の主因となっている。中間報告には、この病因を悪化させる因 子が多いように思われる。 以下、この点に絞って、意見を述べたい。 教育基本法が個人の尊厳を強調し得たのは、組織への個人の精神的隷属が大 災厄をもたらすことを日本社会が苦い体験により認識したからではなかったか。 しかし、半世紀を経て、隷属の種類や様態は多様化したものの、国や会社や学 校や役所などに個人が精神的に隷属する度合が日本社会において弱まったとは 思えない。それどころか、国民の生活基盤を不安定化する政策が着々と組織的 に徹底して進められている中で、その度合はさらに高まることが予想される。 具体例を一つ挙げたい。直接的産学連携は大学の使命にとっては二次的な活 動にすぎない。直接的産学連携に大学の諸資源を動員せざるを得ない人工的環 境に大学を置く「国立大学法人」化は、普遍的価値観に基づく本来の教育と研 究の活動を困難にし、日本社会の意識構造をさらに狭隘なものとする有害無益 な政策であるーーこう考えていない国立大学教員は居ないが、批判や反対の声 は少ない。なぜか。以前は、大学には「長いものに巻かれろ」という本能を克 服した者が比較的多く棲息していたが、財政的隷属状態が続く間に、この本能 に屈する声が次第に大学社会の中で力を持つようになっているためである。こ れは、組織への個人の隷属度の強化ーーこの場合は財政的圧力による強化ーー がもたらす国家的災厄の一例と言えるだろう。 「長いものに巻かれろ」という本能が跋扈する組織は活性を欠き、危険な方 向に組織が変化していくことを構成員が察知しても軌道修正ができない。構成 員の大半が専門的知識を豊かに持っていても「有能」でも役に立たない。「長 いものに巻かれろ」という本能から自由である精神的風土を形成することが、 日本社会が今取り組まねばならない中心的課題である。 現在の学校教育は、この課題の解決を阻む役割を果している懸念がある。 「長いものに巻かれろ」という本能とは無縁の青少年−−独立不羈の心性を持 つ子供達−−は少数ながら相当数居る。そのような青少年を「公共心がない」 「協調性がない」として、あるいは矯正し、あるいは排除する傾向が強まって きているように思われる。 この中間報告の柱となっている「公共の精神」は、「義務をしっかり果たそ うとする責任感,規範意識,伝統や文化を大切にする心」等の並列項目を見れ ば、「滅私奉公」に近いものを指向していることがわかる。これらの美辞麗句 は、諸組織が構成員の忠誠を強化するときに使ってきた言葉であり、これを重 視することは、社会を蝕んできた「長いものに巻かれろ」という風潮を強める ものであり、誤診に基づく治療である。万が一このような治療が施されること になれば、日本を覆っている「長いものに巻かれろ」という雲はとめどなく厚 くなり、日本社会は精神的漆黒に包まれることになろう。 中央教育審議会の委員の方の中で「長いものに巻かれろ」という衝動を克服 しておられる方は、事務局が作成する草稿を推敲する作業に終始することをや め、教育基本法の見直しが本当に必要なのか、それとも、教育基本法が無視さ れてきたことが真の問題ではないのか、それをご自身で見極めて、一から審議 をやり直して頂きたい。ご多忙中とは言え、片手間で委員を勤めることをやめ、 一国の未来を左右する審議のために納得のいく判断をご自身で得られるまで調 査と検討に時間を割いて、あなたがたが雲の上から私達に要求する「公共の精 神」を、あなたがた自身が示してみせて頂きたい。そして、人々が組織に隷属 することなしに、精神的に強く元気に生活できる、健康で活力ある社会の形成 のために、教育において何が必要か、どういう教育が障害となるか、を真剣に 考えて、答申を出して頂きたい。 --[end kd 03-01-05-2]------------------------------------------------ --[begin kd 03-01-05-3]------------------------------------------------ [102-kd-3] ネット上公開されている意見等の紹介 ---------------------------------------------------------------------- [102-kd-3-1] 井深雄二氏(日本教育行政学会、名古屋工業大学)パブリックコメント http://www.ma.ccnw.ne.jp/ibuka/works/opinion.html#意見 [102-kd-3-2] 井深雄二「教育振興基本計画と教育改革の手法」 教育学関連15学会共同公開シンポジウム2002年12月7日 「教育基本法改正問題を考える―中教審「中間報告」の検討」 http://www.ma.ccnw.ne.jp/ibuka/works/opinion.html#%8E%E8%96%40 抜粋 「・・・ 4.おわりに 今回、教育基本法の見直しが文部科学省の政策課題となるに至った直接の契 機は、教育改革国民会議報告であった。同報告では、教育基本法を見直す必要 性について、要約すれば、(1)新自由主義的教育理念の付加、(2)「伝統的」ナ ショナリズムの復権、(3)教育振興基本計画の策定、の三点わたる理由が示さ れていた。この中、本報告で検討した教育振興基本計画策定のための教育基本 法改正論は、一見するところ立法技術的な問題にすぎないように見える。しか し、仮に、今回の教育基本法の「改正」が、中教審「中間報告」で示されたよ うに、教育基本法の第10条又は(及び)第11条に教育振興基本計画の根拠規定 を設けるという形で収束したとしても、それは、教育基本法の精神の重大な変 更を意味する。 周知のとおり、教育基本法は、教育勅語に替わる教育目的を明示した「教育 宣言」であると同時に、日本国憲法と不可分な「教育憲法」として制定された。 そのことの意味を改めて振り返れば、教育基本法制定の歴史的意義は、それが 公教育における国家(state)と国民(people)の関係を、国民主権の立場か ら規律 した「教育人権宣言」である点に求めることができる。教育基本法が 理念法であるということの意味も、このように理解されるべきである。  ところが、「中間報告」における教育振興基本計画は、国家戦略の必要に基 づく人材養成計画として構想されている。従って、その根拠規定を教育基本法 に設けることは、「教育人権宣言」としての教育基本法の性格をゆがめるもの とならざるを得ない。即ち、そのことにより教育基本法の訓示的諸規定は、教 育行政の任務と限界を規律する根拠としてではなく、自由であるべき国民の教 育活動を国家が規制する根拠に転化されることになる。その意味で、教育基本 法に教育振興基本計画の根拠規定を設けるという「改正」論は、教育振興基本 計画それ自体の内容とは相対的に区別されるところの、教育改革行政のあり方 の問題を内包しているものと言えよう。」 [102-kd-3-3] 愛知教育大学教職員組合秋季大会 [教育基本法の改悪に反対する決議] http://ac-net.org/dgh/02/c05-aichi-edu.html [102-kd-3-4] 教育と文化を世界に開く会:呼びかけ人コメント http://www1.odn.ne.jp/kyoiku-bunka/comment1.html 西原博史(早稲田大学教授) 尾木直樹(教育評論家) 俵 義文(子どもと教科書全国ネット21) 石井小夜子(弁護士) 喜多明人(早稲田大学教授) [102-kd-3-5] 子どもと教科書全国ネット21事務局長声明 2002.11.14 http://www.ne.jp/asahi/kyokasho/net21/20021115danwa.htm [102-kd-3-6] 加賀谷いそみ「教育基本法改悪の動き」[aml 31297] 2002.12.13 http://www1.jca.apc.org/aml/200212/31297.html #(戦後の経緯と、最近の動きの詳細な記録) [102-kd-3-7] 教育基本法全国ネットワークサイト http://www.h4.dion.ne.jp/~kyokihou/framepage2.htm [102-kd-3-8] 子どもと教育・文化 道民の会 ー憲法・教育基本法・子どもの権利条約を守り、生かそう!ー http://www.dokokyoso.jp/kodomo-kyoiku/annai.htm [102-kd-3-9] 「一日中央教育審議会」意見発表(2002、11、30) 青木茂雄(都立高校教員)「教育基本法は変えるべきではない」 http://www.bea.hi-ho.ne.jp/hidekiyo/aokisinoikenn.htm [102-kd-3-10] 教育基本法改正問題 http://members.tripod.co.jp/transnews/kyoiku_kihonho.htm #(報道クリップ集) --[end kd 03-01-05-3]------------------------------------------------ --[begin kd 03-01-05-4]------------------------------------------------ [102-kd-4](転載)青木茂雄「11・30一日中教審」の運営方法に関する公開質問状 http://www.bea.hi-ho.ne.jp/hidekiyo/hangekihirogaru.htm ---------------------------------------------------------------------- 「去る11月30日(土)に開催された教育基本法に関する「一日中教審」は、 傍聴者及び意見発表者の入場に際しての厳しい荷物検査が行われ、しかも意見 発表者の入選において著しく公平さを欠いた運営が行われるなど、運営方法に 大きな問題点を残しています。 以下、主催者側に対して運営方法についての質問をします。 (1)開かれた場である公聴会の場に厳重警備は不必要である。会場の入口に は明らかに私服刑事と見られる者が多数、入場者に対して目を光らせている。 はなはだ不快である。しかも、会場までは警察官を含む警備が列をなしている。 これが、開かれた場である公聴会で行われることなのか?この国はいったい民 主主義の国家なのか?  何のために、荷物検査までしたのか?その理由をご説明願いたい。  また、私服刑事をどうして呼んだのか?その理由もご説明願いたい。 (2)文部科学大臣はあいさつの中で「会場からも意見を出してほしい」旨の 発言をしたが、実際には実施されなかったのはどうしてか?会場から不規則発 言が出たのはあまりにも一方的な運営が行われたからである。 (3)発言者の応募数は86名とのことだが、一部マスコミには73名と発表 されていた。この違いが生じたのはなぜか? (4)教育基本法の「改定」問題を国民に問うのがこの会の趣旨である。した がって、賛成・反対同数の意見発表者を選ぶべきである。同数でなければ、賛 成・反対の数に比例して意見発表者を選ぶのが筋である。私が確かめた範囲で も、反対の意見は30通を越えている。実際はもっと多くが反対意見であった はずである。しかし、意見発表者のなかで明確に反対意見を述べたのは私ひと りである。おかしいではないか。どうしてそうなったのか、その理由を説明し ていただきたい。 (5)主催者は教育基本法の賛成・反対の数をどのように考えているのか?新 聞記事では、6:4、7:3、8:2とまちまちである。 (6)12月2日(月)に私が電話で生涯学習政策局政策課に聞いたところ、 賛成・反対の数に比例するのではなく、意見の内容に応じてとのことであった が、そうであるとするならば、同趣旨の意見(「愛国心」を条文に盛り込めと いうもの)が3人もあったが、おかしいではないか。これはどうしてか?理由 をご説明願いたい。 (7)一説によると、河村副大臣の意向で、発言者が当初の予定から4人増や されたというが、本当か?もしそうであるなら、大変由々しき事態である。  以上の質問に対し、誠意ある回答を下記あてに2002年12月16日まで に送付してください。                                          2002年12月6日  文部科学省生涯学習政策課 殿 #(住所等省略)                   青木茂雄(一日中教審意見発表者) (注:12月23日現在、何らの返事がない)」 ---------------------------------------------------------------------- [102-kd-4-1] 参考:大岡みなみ氏傍聴メモ: 「2002年11月30日(土曜日) 「国民の声を聞く」公聴会」 http://www.geocities.co.jp/Playtown/1541/zakki2002-11.html 「・・・教育基本法の「見直し」に向けて中教審がまとめた「中間報告」に対 し、「幅広い国民の意見をうかがう」ために開かれた公聴会だが、会場の内外 はものものしい警備体制が敷かれ、ボディーチェックと荷物検査まであって、 会場は緊張した空気に包まれた。・・・」 「・・・「公聴会なんて『国民から意見を聞きました』というアリバイ作りに すぎない」という批判があるが、公正に意見発表者を選んだとはとても考えら れない状況で、アリバイにもなっていないとしか思えない。むしろ、傍聴者か ら「国民は完全に馬鹿にされてるんじゃないか」といった感想が出るほどの公 聴会だった。とっても怖くて嫌な時代になったなあ…。」 --[end kd 03-01-05-4]------------------------------------------------ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 編集発行人:辻下 徹 tujisita@math.sci.hokudai.ac.jp 関連ページ:http://ac-net.org/dgh/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ End of Weekly Reports 102